ダウンシフターに群ようこ「れんげ荘」

群ようこ「れんげ荘」は、広告代理店に勤める45歳独身の女性が、仕事を辞めて家賃の安い古いアパートに引っ越して暮らしていくという話し。

群ようこの本は、子どもの頃からよく読んでいるけれど、この人は時代の空気を汲み取るのが凄く上手だなとあらためて思う。「無印良女」も「かもめ食堂」も、この「れんげ荘」も、その時代の空気感がよく出ている。

「れんげ荘」は、ダウンシフトの考え方が市民権を得つつある今、「かもめ食堂」に続いて人気が高そうだ。もともと群ようこがバブル景況とは相容れないような作家だし、森茉莉についての本も出しているから、ある意味では時代が追いついてきたとも言えるのかもしれない。

主人公のキョウコは、広告代理店の嘘を売るような商売に嫌気が差して、家賃3万円のボロアパートに引っ越す。無職を満喫出来るかと思いきや、ボロアパート「れんげ荘」は隙間だらけで、冬は極寒、夏は蚊やナメクジが出る。キョウコはこれでよかったのかと悩みながらも、「れんげ荘」で生活していく。

実は、僕も広告代理店で仕事をしていたのだけれど、「嘘を売る」感じが嫌で東京を逃げ出してきた。そして今は家賃3万円のアパートで暮らしている。なんだか、とても境遇がよく似ていて、読んでいて笑ってしまった。夏の虫が多いのも(ウチはナメクジと蚊と合わせてゴキも…)、冬の隙間風が辛いのも経験してきた。違うのは二人暮しで、貯金がそんなに無いこと、場所が東京ではないことだ。

毎日満員電車に揺られ、会社で夜遅くまで働いて嫌気が差している人も多いだろう。もしこの小説のような暮らしが苦では無さそうなら、東京のボロアパートに住んだり、地方に移住するのもいいかもしれない。最初は冬の寒さと夏の暑さにビックリするかもしれないが、なんとかなる。僕の場合は、高知の暑さにギブアップしてエアコンを導入したけれど、それだけでボロアパートも快適になった。

ダウンシフトに興味がある方は、一度読んでみるといいかも。