久し振りに、夜中まで寝る間も惜しんで本を読んだ。
太平洋戦争中、ニューギニアに上陸してから、日本に帰還するまでの日記で、密林での10年間にも及ぶサバイバル生活が綴られている。
前半は、戦時中の次々と同胞達が死んでいく戦争の悲惨さが綴られている。行軍中にマラリアや事故で死ぬ者、敵の襲撃により斃れる者。戦争の無慈悲さ、命の脆さが際立つ。
中盤以降は、10年間にも及ぶ密林でのサバイバル生活の詳細な日記で、ジャングルを開墾して甘藷やパパイヤを栽培したり、猪や鳥の猟の様子が綴られている。
後半は原住民との交流も盛んで、かなり友好的な関係を築いている。戦後もジャングルで生き延びた多くの日本兵は、略奪などをしていたようだか、彼らは原住民とまったく同じ生活をすることで生きていたというのが新鮮であり、また好感が持てるところだった。原住民とも対等に接しており、時には狩りや植物の栽培方法を教えてもらったり、一緒に寝泊まりしたり、なんだかけっこう楽しそうだったりするのだ。
この本が面白いのは、ただ戦争の悲惨さを伝えるだけでなく、またサバイバルの厳しさを語るだけでない、原住民との交流や狩りの楽しさが素直に表現されているからかもしれない。
あとがきを読んで驚いたのは、これが書かれたのは日本に帰還してすぐの頃で、それから30年余誰にも知られていなかったということだ。そしてこれほどの本が、意外と読まれていないのは勿体無い。戦争物と毛嫌いせず、是非多くの人に読んでもらいたい名作であった。