家賃とトイレと便所アブ

今住んでいるアパートの家賃は、ダントツに安い。

インターネットで高知の賃貸物件を探してみたが、同じような間取りでスーパーや買い物が出来る店が近くにあり、家賃が今より安い物件は出てこなかった。

高知に移住するときに一番に考えたのは家賃をとにかく下げることだった。勢い任せの移住だったので、今後仕事がどうなるかもわからない状態で、固定費は最大限削りたかったのだ。

実際、この家賃を限界まで下げる選択は間違っていなかったと思う。このとき家賃を思い切り下げたことで、働くことのプレッシャーはグンと少なくなったからだ。

その物件探しは思いの外難航した。高知県まで来れば、家賃はどこも安いだろうと思ってきたのだが、想定していたより家賃相場が高かったのだ。それでも粘って、高知市から隣の南国市まで、5〜6件の不動産屋を周り、二人暮しが出来る一番安い部屋を探してたどり着いたのが、現在のアパートだった。

目の前に隣の家が迫っていて日当たりは悪かったが、家賃は相場よりかなり安く、また小さな庭が付いているのが気に入って、契約することに決めた。

広さは東京で住んでいた部屋より少し小さくなるが、部屋数は変わらないし、自由にできる庭も付いていて、すぐ近くに大型スーパーもある理想に近いアパートだった。

ただ難点は、トイレだった。トイレが簡易水洗だったのである。

都会に住んでいる人は知らないかもしれないが、簡易水洗トイレとは、ボットン便所と同じように汲み取り式なのだが、洋式便座が付いていて、足元のペダルを踏むと少量の水が流れて、便器の底の蓋がパッカンッと開いて汚物が下に落ちる仕組みになっているトイレである。

この簡易水洗トイレというのは、ほとんど水が溜まっていないので汚れはこびり付きやすいし、バキュームカーで汲み取りしなきゃいけないし、夏には虫が湧くし、ぜんぜん良いところが無い。

とくに便所アブといわれるアメリカミズアブが湧くと最悪。黒い小さなフナムシみたいな形の幼虫が下の便層からトイレの中まで這い上がって来るし、秋には羽化した成虫がトイレの中を5〜6匹飛び回っていたこともあった。成虫はけっこうデカくて、5センチ近くになる。便層のうんこの中から羽化した5センチもある黒い羽虫がぶんぶん狭いトイレを飛び交っているのは恐怖以外の何物でもない。

ということで、トイレ事情は本当に辛いのだが、その分家賃を安く抑えることが出来ている。

もし、地方移住を考えていて、その上あまり働きたくないという固い意思を持っているのであれば、あえて汲み取り便所の物件を探してみるのもアリだろう。

ただし、夏の虫には覚悟が必要だが。