退社するのはもったいない?

今まで会社を辞める度に「もったいない」と言われてきた。

「せっかく長い時間頑張ってきたのに、もったいない」

「給料良いのに、もったいない」

「昇進したのにもったいない」

それなりの期間同じ仕事を続けていると必ず言われることだ。「時間」とか「給料」とか「昇進」とかいろいろ言われるが、結局のところ言いたいのは、「金」だ。金がもったいないのだ。

年功序列の制度は無くなったといわれているが、同じ仕事を続ければ続けるほど給料はある程度上がっていくし、給料がそれほど上がらなくても仕事に慣れることで業務効率が上がって楽に仕事が出来るようになる。

僕の例でいえば、入社してから給料は上がったし、出社の必要すら無くなって、自由は増えた。だから、退社するときには「なんで辞めるんだ、もったいない」といろいろな人に言われた。

たしかに給料はそこそこだし、拘束時間も少く、自由ではあったが、僕としてはそこに留まり続けていることが嫌だった。

どこに行くにも何をするにも、自分が心から賛同出来ていない会社の看板を背負うのが耐えられなかった。このまま同じ会社で働き続けた将来を想像して嫌気がした。

「世の中は結局金だよ」それはたしかに一面ではそうかもしれない。でも、その金では満たされない何かを求めてしまったら、「もったいない」という理由で、同じ会社に留まり続けることは出来なかった。

退社の理由が金の人ってそんなにいないのではないだろうか。現在の日本では転職すると給料が下がるのが一般的である。よっぽど優秀な人材を除いては、転職先で即戦力として活躍するのは難しいので、給料は下がりがちだ。

だから、転職する人の多くは給料アップではなく、他の目的があって転職しているはずだ。人間関係に疲れたとか、仕事に飽きたとか。

「もったいない」なんていうことばかりを考えているのは、資本主義の精神が骨の髄まで染み付いてしまっているせいだろう。金の価値が、人間の価値や自分自身の価値より上だと認めている人間がそういうことをいうのだろう。

そういう金を神のように崇め奉る人らには注意した方がいい。彼らは金のためなら何でもやる。金は神であり、人間の価値よりも尊いものだからだ。

最近、郵便局のかんぽ生命が問題になっている。郵便局の経営体制が問題なのは間違いないが、この業務にあたっている職員にも問題がある。いくら営業のプレッシャーが強いからといって、不正行為をするのは「金のためなら何でもやる」精神があるからではないか。この仕事をクビになったらどうしようとか、仕事(金)はゼッタイとか、そんなことを考えた結果なのではないか。「こんなクソみたいな会社辞めてしばらくぶらぶらしよーっと」と考えられる人は、今回のような問題は起こさないはずだ。

不正を行うのは個人であり、「金が一番」という気持ちがこの行為を助長させているのは間違いないだろう。それは、世の中の雰囲気が生産性や経済効果ばかりを重要視する風潮にも影響を受けているのかもしれない。

まぁ、いずれにしても、世間や会社がなんと言おうと、「金なんて無くてもなんとかならぁ」の精神でやっていきたい。