やっぱり楽しい 深沢七郎著「書かなければよかったのに日記」

深沢七郎のエッセイをよく読む。ふざけたような怖ろしいような文章が読んでいて楽しい。

十年ほど前、東南アジアの安宿で深沢七郎の文庫本を何度も何度も本の小口が手垢で薄黒くなるまで読んでいた。

マレーシアでは英語を覚えようと語学学校に通っていた。最初のうちは日本語の本は読まずに英語の本だけを読んで徹底的に勉強しようと決めていたのだけれど、昼間はアホみたいに暑いし、夕方には雨が降ってびしょびしょに濡れるし、RとLの発音の区別は出来ないし、早々に英語の勉強は諦めて毎日深沢七郎ばかり読んでいた。

エアコンが効きすぎた部屋と果物が腐ったような臭いを覚えている。徹底的に読み込んだその文庫本はどこかの安宿に置いてきたがまだ誰かが読んでいるだろうか。

深沢七郎の魅力はなんだろう?

仕事をころころ変え、住むところを変えて、自由気ままな生活。陰鬱なところが無く、ふざけているようで、どこか淋しい感じもする。ヒトには優しいけれど自分勝手。

文章のリズムも言葉のチョイスも読んでいて実に気持ちがいい。

発表から40年以上経た今でもにやにや笑えるのは稀有なことだと思う。

別の短編集にも収録されているが「いのちのともしび」という短いエッセイ(小説?)は何度読んだか知れない。たぶん50回くらいは読んだだろう。

随分前から、深沢七郎の全集を買おうかどうか迷っている。

全集って買ってもあまり読まないんだよな。結局手に取りやすい文庫本ばかり読んじゃう。高いしなー、どうしようかな。