井伏鱒二「黒い雨」やっぱり戦争は嫌だ

僕は戦争反対だ。

ただ単純に僕が戦争に行きたくないから。

理屈を捏ね繰り回していろいろ言う人がいるが僕は単純に戦争には行きたくない。

8月ということもあって久しぶりに戦争物の本を読んだ。

井伏鱒二「黒い雨」

平凡な市民の物語。軍人でもなく特殊な立場にいるでもない普通の市民が広島で被爆することではじまる小説。

広島の原爆が普通の市民をどうさせたか、あくまでも一般市民の目線でその実情が描かれている。

この小説のなかで、原爆が落とされた広島でいくつもの死体を見ながら主人公の重松が思ったこととして下記のような記述がある。

戦争はいやだ。勝敗はどちらでもいい。早く済みさえすればいい。いわゆる正義の戦争よりも不正義の平和の方がいい。

戦争を実際に経験した井伏鱒ニの正直な思いがここに現れているのはないだろうか。正義とか不正義とかどうでもいいから平和であってほしいという願い。

戦争は正義と正義の対立で起こる。世界征服を企む悪の組織などではなくて、正義の為に戦う軍隊と、また別の正義の為に戦う軍隊との戦いが戦争になる。

あの悪名高いヒトラーでさえ、死に際に「私は死ぬが、将来英雄として称えられるだろう」と遺言を残したと言われている。ヒトラー自身にとってはナチスの虐殺も正義の戦いだったのだろう。

だから正義とかなんとかもっともらしい理屈を捏ねる人間は恐ろしい。

ただ単純に「戦争は嫌だ」だから「反対」ということでいいのではないか。そんなことをあらためて思わせてくれた本だった。