「勇ましさ」の危険性 水木しげる著「水木しげるの戦場」

「水木しげるの戦場」は、水木しげるの戦争マンガをまとめた作品集。

今回読んで印象的だったのは、戦中の教育や考え方が「勇ましさ」を大切にしていたということだ。

そしてその「勇ましさ」というのは、とても気持ちのいいもので、今でも戦争論などを読むとその「勇ましさ」に気持ち良くなってしまうが、それでは駄目なのだと水木しげるは画く。

戦争中に戦地で出会った原住民は、けっして勇ましくなかったが、「いい人」であり、「幸せそう」であった。

それに対して、勇ましい日本人は暴力的で、毎日のようにビンタをし、いじめた。

この性質は日本人に残っていて、現代の人達も「勇ましさ」が好きなのではないか、と水木しげるは心配していた。

たしかに、われわれは勇ましいことが好きだ。少年マンガに描かれるのは決まって勇気を持って戦う主人公だ。

果たして本当に勇気を持つことは大切なのだろうか?

僕が好きなブログに「でたらめ山暮らしブログ版」というのがあるが、そこに「野生動物は逃げるが勝ちの世界」という記事があった。

人間は勇気とか戦うことを良いことだとするが、野生動物は絶対に無駄な戦いはしない。少しでも危険を察知すれば近付かないというのが基本で、むしろ臆病なものだ。だから、人間も野生動物を参考にしていれば無駄な争いをしなくても良くなるのではないか、といった記事だったと思う。

勇ましさを好む好戦的な性質は、人間の最も危険な性質なのかもしれない。